Project データ×観光で創る、いしかわの新しい未来型感動体験をデザイン

Client 金沢大学 先端観光科学研究所様
Url https://txsc.w3.kanazawa-u.ac.jp/

Outline

金沢大学 先端観光科学研究所は、内閣府「令和6年度 地域中核大学イノベーション創出環境強化事業」に採択され、観光科学を核とした文理医融合研究による地域課題解決とイノベーション創出を目指しています。

本研究所が掲げる「TX」——T(Tourists, Tourism, Technology)とX(Experience)——は、観光を科学的に解析し、すべての人が安心して楽しめる観光社会の実現を目指すコンセプト。加賀・能登をフィールドに、「共感」「移動」「共有」の3つの研究部門を軸に、データドリブンな新しい観光の形を創造しています。

ニコットラボは、事業認知の拡大、公式情報のハブ化、TXブランドの確立、潜在的協力者の掘り起こしを目的に、情報設計からビジュアル、インタラクション、アクセシビリティまでを一気通貫で設計し、特設サイト「データと旅する感動体験いしかわ」の制作を通じて、データサイエンスと観光体験を融合させた未来型の観光デザインを、ポップで親しみやすいビジュアルで表現しました。

データ×観光という新しい概念を、
"わくわく"するビジュアルへ

「観光をサイエンスする」という新しい学問の認知拡大

北陸・石川県において観光は重要な産業ですが、「観光科学」という学問領域は一般にはまだ馴染みがありません。文理医融合のアプローチで観光に関わる行動、サービス、政策を科学的に解析し、データに基づいた新しい観光体験を創出する——この革新的な取り組みを、どう分かりやすく伝えるかが課題でした。

多様なステークホルダーへの発信:本サイトの目的

  • 事業認知の拡大と公式情報の周知
  • 「TX」(先端観光科学)のブランディング
  • 潜在的な協力者の掘り起こし
  • 若年層への訴求(金沢大学入学検討者)

「心→数値→心」という研究の本質——主観的な体験をデータ化し、それを再び感動体験へと昇華させるプロセス——を視覚的に表現することが求められました。

学生との共創による親しみやすさの追求

プロジェクトには金沢大学の学生も参加。「デザイン性のあるフォントで興味を引きつける」「ポップながらも科学技術のイラストを組み合わせた融合学域らしさ」「温かみのある自然や温泉、食べ物の印象」など、多様な意見を統合し、学術的な信頼性と親しみやすさを両立させたデザインが求められました。

「データと旅する感動体験いしかわ」特設サイトの制作は、金沢大学の教員・学生との密接な対話を重ねながら進行

1. ヒアリング・コンセプト策定:研究所の目指す方向性を明確

  • TX(Tourists×Technology×Experience) – ブランドの核
  • 観光をサイエンスする – データドリブンな研究アプローチ
  • 地域から世界へ – グローバルな展開
  • 心→数値→心 – 主観的体験のデータ化と再構築

2. ネーミング策定

教員・学生・事務職員が一体となってアイデアを持ち寄り、融合系事務部総務課の提案「データと旅する感動体験いしかわ」に決定。データと観光、そして未来の感動体験を一言で表現した印象的なネーミングとなりました。

3. ビジュアルコンセプト策定:学生からのフィードバックでビジュアル化

  • 感動バロメーター – ♡マークで感動を可視化
  • データの流れ – 観光客の移動経路や滞在時間を曲線で表現
  • 地域資源 – 温泉、伝統工芸、自然景観をポップなイラストで表現
  • 研究者の姿 – データを分析する研究者のシルエット

特に「感動」の可視化では、SNSの「いいね!」のような♡マークが大量に発生する演出を採用し、「最先端な印象」を与えながら若年層にも親しみやすい表現を追求しました。

4. 地域資源のイラスト設計:加賀・能登それぞれの地域特性を反映

加賀: 温泉体験、伝統文化体験(九谷焼、漆器、金継ぎ、抹茶)、自然体験

能登: 漁業・食文化(魚介類、醤油、どぶろく)、自然との共生(星空、イルカ、縄文文化)、古民家体験

これらをデータ分析の可視化(グラフ、流動データ)と組み合わせ、「観光×データサイエンス」を直感的に表現しました。

5. インタラクティブ要素の設計

  • 自動発生する♡ – ファーストビューで隅々から湧き出る様子
  • クリックで大量発生 – 人物の表情をクリックするとInstagramの「いいね」のように大量の♡が発生
  • データの可視化 – 人気スポットや滞在時間をインタラクティブに表示

データと感動が交差する、いしかわの観光体験をファーストビューで表現

石川県の地図をベースに、加賀・能登の観光資源と研究活動を融合させたイラストを展開:

  • 石川県の地図 – 認識しやすい石川県のシルエット
  • 能登島のイルカ – 大きく目立つよう配置
  • 研究者のシルエット – パソコンに映るグラフやデータで「観光をサイエンスする」を表現
  • 観光客 – スマートフォンで情報を調べる姿
  • 地域資源 – 温泉、工芸品、自然景観をポップなイラストで配置

サイト構成

  • News / Report – プロジェクトの進捗や成果発表
  • About – TXの概要
  • Project – 地域別にプロジェクトとメンバーの紹介

ロゴデザイン

「TX」を印象づけるため、石川県の地図・データと道標をモチーフにしたロゴデザインを制作。データと観光、そして体験(Experience)を象徴するシンボルとしました。

学生・教員・事務職員、みんなで創る
"わくわく"

多様な声を統合する共創プロセス

金沢大学の学生が積極的にデザインプロセスに参加。観光デザイン学類の学生さんからは「デザイン性のあるフォントと科学技術イラストの融合」、フロンティア工学類の学生さんからは「温かみのある自然や温泉の印象」など、具体的なフィードバックが寄せられました。「ポップだけど科学的」「親しみやすいけど先進的」という絶妙なバランスを追求し、繰り返し議論を重ねました。

Result

2025年3月末に初期公開された本サイトは、生み出す成果:

  • 事業認知の拡大とTX(先端観光科学)のブランド確立
  • 若年層へのリーチ拡大
  • 産学連携の促進

特に、学生さんとの共創プロセスは、「本サイトを見ながらわくわくするようなデザイン」という当初の目標を体現。「楽しい議論だった」という参加者の声からも、創造的で有意義なプロジェクトだったことが伺えます。

第2フェーズとして具体的な取り組みや研究者の多様性がさらに更新されました。サイドメニュー(グローバルナビゲーション)も閉じ開きができ、インスタグラムにすぐに遷移できるよう、使いやすく変更しました。

金沢大学が目指す「すべての人が安心して楽しむことができる観光社会」の実現。その挑戦を、ニコットラボはこれからもデザインの力で支援し続けます。

Credit

  • クライアント:金沢大学 先端観光科学研究所様
  • 株式会社かんざし:https://www.kanxashi.co.jp/
  • プロジェクト:地域中核大学イノベーション創出環境強化事業
  • 公開:2025年3月(一部段階公開)
  • ニコットラボ:要件定義/IA/UIデザイン/コピー/イラスト指示/モーション設計/アクセシビリティ設計/実装/運用設計
  • Special thanks:金沢大学 融合学域 観光デザイン学類・フロンティア工学類の学生のみなさま(フィードバック協力)