Project 夢のコンピュータの実現へ。中性原子方式量子コンピュータ開発のディープテックスタートアップサイト

Release 2025.07
Client 株式会社Yaqumo 様 コーポレートサイト
Role Planning,UX Design,Direction,Art Direction,Design,Motion Design
Url https://yaqumo.com/

Outline

世界が注目する量子技術を、ビジュアルで体現する

2024年4月、京都大学と分子科学研究所の世界トップレベルの研究者たちが結集し、株式会社Yaqumoが誕生しました。同社が挑むのは、「冷却原子(中性原子)方式」による大規模誤り耐性量子コンピュータの開発——現在のスーパーコンピュータでは解決できない問題を、革新的な手法で解き明かす次世代技術です。

Yaqumoが採用する冷却原子方式は、システムの大規模化やエラー処理において画期的な可能性を持つとして、産官学から大きな注目を集めています。内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」においても、この方式での研究が推進されてきました。

立ち上げ直後のスタートアップにとって、最先端技術を投資家、連携企業、採用候補者に的確に伝えることは大きな挑戦でした。また、会社名「Yaqumo(八雲)」に込められた量子の重ね合わせ状態と日本的美意識を視覚化し、海外競合と差別化されたブランドアイデンティティを確立することも重要なミッションでした。

ニコットラボは、ロゴデザインからWebサイト制作まで、Yaqumoのブランディング全体を支援。量子技術の先進性と日本発スタートアップとしての挑戦を、印象的なビジュアルで体現しました。

ロゴデザイン:「Q」と「雲」、二つのアイデンティティを融合

ロゴデザインでは4案を提案。デザインコンセプトは「先進的」「挑戦的」「日本らしさ」。量子(Quantum)の「Q」、社名の由来である「雲の重なり」、そして「量子の重ね合わせ」を視覚化しました。

A案:日本的な雲の造形でQを表現

墨絵のような有機的な曲線で「Q」を描き、八雲(重なり合う雲)を表現。視認性とアイコニック性を両立。クライアントが最も評価した案。

B案:原子配列の規則性を表現

量子ビットとして整然と配列する原子の様子を、幾何学的なパターンで視覚化。

C案:光ピンセット技術をモチーフに

Yaqumoの強みである「光ピンセットで原子を操作する」技術を、動的なフォルムで表現。

D案:和の美意識と量子の融合

日本的な意匠を取り入れつつ、量子の重ね合わせ状態を抽象的に表現。

最終的に採用されたA案は、「一目でYaqumoと分かる」視認性と、日本的な美意識、量子技術の先進性を統合したデザインとして評価されました。カラーは深い紺色をベースに、アクセントとして薄い金色を配分。競合他社との差別化を図りながら、和の美意識と先進技術の融合を表現しました。

Firstview

新たな地平を拓く、中性原子の夜明け

「中性原子が拓く、量子コンピューティングの新たな地平へ。」というメッセージを軸に、中性原子が太陽のように新しい地平線から昇ってくるイメージをアニメーションで表現。両側の雲がゆっくりと開いていく動きに合わせて、最先端技術が未来を切り拓いていくメッセージを伝えます。

背景には量子を表す無数のドットを散りばめ、色がランダムに変化することで「量子もつれ」の現象を視覚化。静止画では伝わりにくい量子の特性を、動きで直感的に理解できるよう工夫しました。

Structure

サイト構成:ステークホルダーごとの情報設計

投資家、採用候補者、連携企業など多様なステークホルダーに対応するため、以下の構成を採用:

  • About Us – 会社のビジョン、社名、ロゴに込めた想い
  • Technology – Yaqumoの有する技術の解説
  • News – 研究発表、プレスリリース
  • Publication – 論文、学会発表など学術的成果
  • Demonstration – 研究の進捗、企業連携の実績
  • Careers – 採用情報
  • Contact – 問い合わせフォーム

Approach

抽象と具体のバランス:量子技術をどう”見せる”か

ステップ1:技術理解とコンセプト抽出

量子コンピュータの基礎から冷却原子方式の優位性まで、徹底的な技術理解から開始。量子もつれ、光ピンセット、中性原子の配列、雲の重なりなどのキーワードを、「かっこよくて抽象的だが、少し研究内容が分かる」ビジュアルに落とし込みました。

ステップ2:差別化戦略の策定

海外の量子コンピュータ企業との差別化を図るため、日本的な美意識深い色調を採用。墨絵のような有機的な表現と、サイバー感のある未来的要素を融合させました。

ステップ3:ビジュアル言語の開発

量子技術を視覚化するため、独自のビジュアル言語を構築:

  • 中性原子 = 発光する球体
  • 量子もつれ = ランダムに色が変化する粒子群
  • 光ピンセット = レーザーの軌跡
  • 雲の重なり = 墨絵風のグラデーション

これらを統一的に使用し、サイト全体で一貫した世界観を構築しました。

ステップ4:段階的な情報開示設計

「すべてを見せるわけではないが、信頼性は伝える」バランスを重視。ファーストビューで先進性を印象づけ、Technologyページで差別化ポイントを明確化、Publication・Memberで実績と人材を提示。「信頼できる技術企業」に結びつける設計を施しました。

Outlook

ブランド基盤の確立と今後の展開

サイト公開は日経新聞の記事掲載と連動して実施し、初期段階から高い認知度を獲得。投資家からの問い合わせ増加、連携企業との商談での活用、採用候補者からの応募など、具体的な成果が見られています。

Yaqumo様が目指す「世界を変える量子コンピュータ」の実現を、ニコットラボはこれからもブランディングとデザインで支援し続けます。